MY HERO’S INTERVIEW

今月のゲストは思い起こすともう22年ものお付き合いになるカメラマンの萩庭桂太さんをゲストにお迎えしました。長年公私ともに撮影をお願いしています。カメラ・写真を通して何を訴えているのか、写真とは何か?人気カメラマンの萩庭さんのアイデンティティをお聞かせいただきます。


GUEST プロフィール
萩庭桂太 Keita Haginiwa
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。 雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。 ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。 「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。 雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://www.haginiwa.com/

MY HERO’S INTERVIEW

Vol.4『I amフォトメッセンジャー』

立河:カメラマンとしてもう30年のキャリアを積んでいる萩庭さん。これまでいろんな経験を積んでいらしたと思います。萩庭さんにとってカメラマンって何ですか?

萩庭:そうだなぁ・・・
人のお金でゲーセンに行ってる感じかな〜。(笑)一番楽しんでいるのは僕でしょ?

立河:「写真を撮る」ことが好きだとお話してくださいました。

萩庭:そう。人のお金でゲーム(写真を撮って)して、ハイスコア(いい写真が撮れたら)がでたらみんなが喜ぶし褒められる。(笑)

立河:好きなことが仕事になってるっていうこと?

萩庭:それが全然仕事だと思ってないんだ。

立河:でも、お金を得るということは仕事でしょ?

萩庭:お金を得るから仕事というのとちょっと違うんだ。最初からお金のためにやってないんだもん。好きなことをやってるから苦労を苦労とも思わない。苦しくないんだ。ストレスがないの。それは収入があろうとなかろうと一緒なんだよね。23歳の時、全財産70円まで行ったことがある。(笑)
手のひらに10円玉が7枚。銀行にもお金ないしね。

立河:今、もしそうなったら?

萩庭:今も平気。10円玉5枚分が50円玉だったらもっと平気。銀色だから。(笑)

立河:あはははは!

萩庭:お金がなくなっても、きっともっとあっさりすると思う。例えカメラがなくなったとしても、技術は自分の中にある。そしたらカメラを借りればいい。だから全然平気。そう言う意味ではね。

立河:カメラマンをやっているのは生活の糧ではないの…?

萩庭:本当は人間としてそういうのを持ってないといけないし、糧がないといけないとは思うんだ。でもオレはあんまりそこに固執してない。たまたま今の自分があるんだよね。 単純にお金だけの話をするとね、あってもなくても変わらないなと思った。つまりやれることは同じなんだ。

立河:そんな風に考えられるベースは何だろう?

萩庭:今の自分はたまたまであって、カメラマンの仕事っていうのはさ、もともと食えないもんなんだ。写真では食えないのが基本なの。だからそういうものだってことがわかってるから、もし今後食べられなくなることがあっても、「そうだよね」って受け入れられる。

立河:強いなぁ。。その覚悟があるのはきっと、ドキュメンタリーカメラマンとしてめまぐるしく変化する時代背景をその目で見て歩んできてるからですよね。

萩庭:うん。それとYour Eyes Only(YEO)をやるようになってから変わったな。全部自分でやらなきゃならないし、お金にならないことだけど、それが一番やりたかった事なんだなって実感してる。

MY HERO’S INTERVIEW

立河:YEOにはいろんな方が登場していますよね。それぞれのお仕事、それぞれの生き方、それぞれの時を刻んでいる。それが萩庭さんを通して写し出されているとても貴重で素敵な写真ばかりです。かれこれ1年前、その時の自分を残したくて私も出していただきました。久しぶりに見ると、私、頑張ろうって思えます。

萩庭:写真って「現実」だからその「現実」の場に自分がいるってことが楽しいんだよね。

立河:大事な瞬間に立ち会えて、写真を通して人に伝えられることがいいのかな?

萩庭:そう。写真って究極の自慢だよね。(笑)ほら、オレはこれを見てきたんだぜ、って。それはやめられないよね。きっと究極の自慢をし続けたいってことかも。(笑)よくさ、有名人にサインをくださいってもらうでしょ?それって、その時、その人に会えたっていう記念じゃない。
写真ってその時を鮮明に残せるし、もっと具体的。
例えばオレのカメラマン人生30年分の写真を時系列でずっと並べていくと、この人こんな生活をずっとしてきたんだっていうのがわかるはずなんだ。それってちょっと恥ずかしいな。(笑)日記とは違う、撮影してるのはオレなんだけど、でも実は被写体の中にオレという人間が写し出されているものかもしれない。

立河:萩庭さんが研究したジャンルーシーフのように、誰かが萩庭さんの写真を研究して、あーわかった!なんてワクワクしているかもしれませんね。(笑) では最後に萩庭さんのIDをお聞かせください。

萩庭:カメラマンといえばそうだけど、なんかピンと来ないなぁ。
フォトメッセンジャーかな?これからもずっとね。

Special thanks,,END


Thank you messege from Noriko Tachikawa

萩庭桂太様
このコーナー、実は萩庭さんのYEOのマネ。あの連載に感銘を受けて、私の尊敬する人にその方の「今」はどんな柱で成り立っているのか、アイデンティティを伺いたくて始めました。萩庭さんがカメラマンとして今日に至るまでを改めて伺えて、取材を介して久しぶりに密なお話ができて楽しかったです。いつかは犬の調教師になってもいいかな、なんて話もしてくれました。その時はまたうちの鉄郎をお願いします。

取材/文 タチカワ ノリコ
Photo Takeru

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「What is your identity? MY HERO’S INTERVIEW」

次回は、新しいゲストをお迎えいたします。お楽しみに!

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