MY HERO’S INTERVIEW

今月のゲストは昨年まで北海道FMラジオAIR-G、杏子のSence of Beautyの美容コーナーを担当させていただいていたときにお世話になったラジオ制作・プロデューサーの桜井聖子さんをゲストにお迎えします。包み込むような優しさの中に芯の強さを感じる、同じ女性として、人生の先輩として尊敬している桜井さんにアイデンティティを伺います。


GUEST プロフィール
桜井聖子(さくらいきよこ) Kiyoko Sakurai
1958年生まれ。有限会社 さくら 代表取締役。 日本大学芸術学部放送学科卒業。(株)テレコム・サウンズ入社、J-WAVE、TBSラジオ、FM横浜、InterFM897、JFM)イベントの企画・制作・プロデュース。放送批評懇親会理事・企画事業副委員長。

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Vol.4『人の中に私がいる』

立河:私から見るとおしどり夫婦。結婚へのきっかけは?

さくら:彼はずっとこの業界でフリーランスとしてディレクターをしていたの。一匹狼でも仕事が絶え間なく来るということは、彼が作るものがいいからだよね。その彼も含め、何人かで一緒に遊ぶ仕事仲間がいたの。ある年、私の誕生日当日に生放送の仕事があって、もちろん番組内容のバランスを考えながらなんだけど、選曲をするときに内緒で自分へのプレゼントに大好きな曲をかけたのね。仕事が終わってその仲間たちから花束やプレゼントを色々いただいたんだけど、彼からは私がかけたその曲のCDだったの。それから意識するようになったのよね。(笑)

立河:生放送を聴いて、さくらさんがその曲を好きだと感じてCDを買ってきてくれたということ?

さくら:そうなの。

立河:うわぁ!!なんて素敵なの!!!ご主人様、人の気持ちを読み解くセンスがあるんですね。本当に感動します。その曲名は?

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さくら: Unforgettable (Natalie cole & Nat king cole)。だからね、この人はちゃんと私のこと見てくれているんだなって思ったの。私はわがままな人生を歩んできてるけど、きっとこの人なら君はわがままだよねって言いながら寄り添ってくれる人だと。

立河:ケンカすることは?

さくら:ありますよ。ケンカしてずっと引きずって時間を無駄遣いするのは嫌なので、言うことは言って、これは平行線だなと思ったらそのまんま置いておく。下手に何かしようものなら火に油を注ぐようなものだもん。それが平和。人生どちらかに寄せないといけない物事ってそんなに多くはないですよ。

立河:白黒はっきりつけさせるためにどちらかに寄せたがるから、うまくいかなくなるんですね。ご主人とあんなに仲良くやっていけるのはどうしてですか?

さくら:おもしろいから。存在がね。見ていて飽きないの。彼の人生の師匠はフーテンの寅さんだよ?(笑)私も自由にわがままに生きてるでしょ?向こうはもう少し静かな人生を送るはずだったと思うけど。多分仲がいいというより、似た者同士なのよ。

立河:あははは!

さくら:もう一つおもしろいのが結婚式を挙げるときに当時テレフォンカードを差し上げるのが流行っていたの。そこには主人と私がそれぞれ大切にしている言葉を直筆で書いたものをプリントしたんですが当日までお互いに何を書いたか内緒にしていたの。私は「感謝」と書いたんです。そして主人は「反省」と。その時やっぱり志は一緒なんだと思いました。

立河:ご結婚されてもう22年目?

さくら:そうですね。会社を起こして23年だから。あっという間。気が付いたらそれだけの年月が経っていました。

立河:それだけ集中してお仕事してらっしゃるということですよね?

さくら:この仕事の癖なのかもしれませんが、目まぐるしく次々と企画を考えなければならないんですよね。今なら年末年始や来春のことを考えるわけです。 その間、同時に進行中の番組も日々きちんと真摯に、大切に向き合って行くことを怠ってはいけません。そうすると常に頭の中は回転しているんですよ。 すると結果、終わったことに対して郷愁みたいなものをいい意味で引きずることなく、次のことを考えるという習慣がつくんですよね。

立河:先々のことを考えているのが仕事に対するモチベーションに繋がっているんですか?

さくら:もちろん、先々を考えることは大切です。でもそれがあるからモチベーションに繋がっているのではなく、日々目の前にあることをどれだけ真摯にやっていけるかなんですよね。それってしんどいことなんです。絶対に壁やハードルがある。そして小さな後悔が沢山あるから反省して乗り越える努力を一生懸命するんです。それがモチベーションですね。

立河:こんなにも毎日いろんなことが起こって、面倒になることはないですか?

さくら:ある。でも、私はどこかネジが一本外れてるんだと思う。普通だったらここで投げやりになってしまうんでしょうけど・・今日はあそこの美味しいワイン飲みに行こうって楽しい方に切り替えてその時は忘れる。結局翌日に処理を持ち越すだけなんだけど。(笑)

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立河:それがさくらさんの強さですよね。昔からそういうタイプですか?それとも経験値がそうさせてるのでしょうか?

さくら:経験値じゃないかな。昔はもっと引きずってたと思う。でもね、辞めたいと思ったことは一度もないの。24歳の時、大滝詠一さんとずっと仕事をさせていただいていて。音にこだわる方だったから1時間の番組に収録時間は6時間くらいかけるのね。いつも夜中から朝方までかけて収録して、私はそのあと朝の生放送があったのね。他にも仕事を抱えていたから1週間で8時間くらいしか眠れない日もあってとにかく眠いの。そんな中、ちょっとしたトラブルがあって、私はよほど疲れた顔をしてしまったんでしょうね。大滝さんに「さくら、今、最悪だと思ってるだろ。」って言われたの。「今、最悪だと思ったら次にもっと大変なことが起きた時にお前はなんと表現するんだ?」と。人生のうちに最悪だと思うことなんてそうないしこれから人生でもっと大変なことがまだまだあるんだと思ったら今が最悪ではないんだって理解したのね。だから何か起こった時に何とかなると考えるようになったのね。

立河:大滝さんの言葉が教訓となったんですね。

さくら:だから私は阪神淡路大震災や911、東日本大震災など世界を揺るがすようなことが起きたときも、メディアとして人に何かを伝える仕事をしている立場で何をするか、「そのとき」を伝えることだと思ったんですね。最悪なことが起こったと立ちすくんでしまうのではなく、私ができることやるべきことを行動に移したんです。だから先々のことに焦点をおくのではなく、目の前のことを真摯に精一杯やっていくというのが全てにおいて大切なことだと感じ取りました。

立河:最後にさくらさんのアイデンティティをお聞かせください。

さくら:うーん。自分が何であるかは実はわからない。私が何であるかを証明してくれるのは人ですよ。きっと。人に助けられて人と会話して、その人が私を見てくれているから、私がいるんじゃないかな。私が私を見ることはあまりないですね。こう思ってほしいなんて思ったこともない。人の中に私がいるんだと思います。

立河:なるほど。人はさくらさんを何と証明してくれると思いますか?

さくら:あ〜さくらさんだね。って。ちなみに主人は「自由だね〜」って言います。(笑)もしかすると、結婚式のときにみなさんに差し上げたテレフォンカードの言葉、「感謝と反省」それに尽きるのかな。あえて言うのなら、絶えずこの気持ちで人に接して行くことが私のアイデンティティと言えるかもしれませんね。

Special thanks,,END


Thank you messege from Noriko Tachikawa

桜井聖子さま
さくらさん、今回の取材を通して改めてさくらさんの優しさ、強さを感じました。テープ起こしをしながら何度涙が出たことか。ある日ちょうど一回りの年齢差で誕生日も干支も全く一緒だということを教えていただいてこんなにも素敵な方と同じ日に生まれていることを誇りにも感じました。尊敬する人生の先輩の生き方を見習って私も日々のことを真摯に取り組んでいきたいと思います。

ちなみにUnforgettable (Nat King Cole)はこちら。人肌恋しいこの季節にぴったり。温もりのあるロマンティックな曲です。

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http://youtu.be/KUMoiU3h750

取材/文 タチカワ ノリコ
Photo Takeru

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「What is your identity? MY HERO’S INTERVIEW」

次回もお楽しみに!

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