MY HERO’S INTERVIEW

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Vol.2『人生を垣間見れる仕事』

立河:現在、AMRITAのオーナーでもあり、スタイリストでもあるしんちゃんですが、経営ともなると付きまとうのが数字。ここをどうやってクリアしていますか?

新海:例えば、経営の本を読んでその通りにやるより、毎日現場に出てスタッフの様子を確かめたり、ちょっとした気持ちの変化とかを気づいてあげられるかということが一番大事だと思ってるんだ。スタッフ自身がお客さんに対して何をしたいか、何を提供するかってことが定まれば、本当に数字=売上(お金)は後からついてくるもんだって言うことは昔からブレずにある。だからオレのやり方をみてどんどん盗んで欲しいし、各々のやり方にアレンジすればいいと思ってる。

立河:美容業界って、どうしても売上先行になってしまいがちじゃない?それでお客様に喜んでもらうことよりも、売上を上げることばかり考えてしまって潰れる人も多くいるよね。お金は後からついてくるって思えるのはどうして?

新海:20代で独立した時、それまでと同じことをしてるのに売上が伸びない時期があったんだ。なぜ伸びないのか自分でもわからなかった。でもあるとき、おかれている状況に甘え過ぎてると思って、今まで自分が好きだったものを断捨離したの。洋服や遊ぶ場所もそうだし、自分の好きなものとはあえて逆のことをやってみようと。そしたら今までなら敬遠しがちな苦手なタイプの人とも親しくなれるようになったんだよね。人の良いところを探してみんなを好きになろうって。自分が柔軟になることを心がけたら自然とお客さんが増えたんだ。

立河:ずっとトップを走り続けてきたプライドも捨てて、学ぶって姿勢に変えたその心がけが数字に繋がったのね。どのくらいのお客さんがいらしたの?

新海:月に400人くらいの髪をカットしてたよ。

立河:400人!めまぐるしく忙しかったね。それだけのお客さんのカットをしてた時ってどんな気持ちで仕事していたの?

新海:自分がはさみを持って、お客さんの体の一部である髪を切るということに対しての責任感を強く持ってた。たまたま時代もリンクしてるんだけどあの頃カリスマ美容師なんて言葉があって、自分の中で「カリスマ」なんてそんな軽いもんじゃないなっていう感覚はあったよ。

立河:カリスマブーム!まさにその一時代を築いたでしょう?

新海:カリスマって呼ばれることが軽くて好きじゃなかった。有名になるということよりも、認められたかった。大した技術もないのに雑誌に出ることよりも、やっぱりちゃんとした技術を持っている人が出るべきだよねって思ってもらいたかった。でもその言葉が先走りしてそう呼ばれることで必然的に指名が取れてた時代だからね。今と違ってSNSもないし、ホームページとかネットでサロンを自在に発信することができなかったから、あの当時はいかに雑誌に載るかってことだった。それがステイタスだったし有名になる近道でもあった。

立河:雑誌での宣伝効果が大きかった時代よね。あの時代、華やかでタレントみたいな美容師さんが多くてマスコミに取り上げられることを先行しちゃってる人もいたよね。

新海:そうだね。むしろそっちの方が多かったんじゃないかな?でも、オレみたいな人もいたしね。決してカリスマになるために美容師やってたんじゃないからさ。やってきたことが結果認められれば、それが=雑誌に掲載されたり、メディアに出たりっていうことなんだと思う。その時は認められたって言う気持ち良さがあったよね。

立河:マスコミが作る流行に惑わされない強さを持ってるって、信頼性深まるなぁ。 その時代にカットしていた客さんは今もいらっしゃるの?

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新海:うん。もう15年以上にもなるけど、当時のお客さんも沢山来てくれてる。そのお客さんの紹介で友達が来てくれたり。

立河:私も友達の紹介で来るようになったもんね。

新海:10年以上のお客さんばかりだからさ、もちろん美容師とお客さんの関係ではあるけど、中には、ただカットしに来るだけの関係性ではなくて、孫の自慢話も聞くし、娘が高校受かったんですよなんて話も聞くしさ。お客さんと一緒になって感動したり喜んだりしてる。(笑)

立河:美容室って、髪を弄ってもらいながら世間話するじゃない?私ね、気を使ってくれてるんだと思うんだけど、むやみに話しかけられるのがなんだか苦手でね、AMRITAに来るようになってからそれがないから居心地良いんです。いつの間にか世間話になってるからうまいなぁって。(笑)その中で自分の話を聞いてもらったりして。いつしか歴史ができてるんだよね。長年通っていれば、みんなそれぞれ年を重ねて環境はすごく変わるよね。

新海:家族で来てくれててさ、こんなに小さな子だったのが、結婚しちゃうんだもん。

立河:今は引退なさったけど、私も子供の頃お母に連れて行ってもらっていた地元の美容室があったの。普段のカットもだけど、七五三や最後は成人式のヘアと着付けをやってもらったの。人生の大きなイベントでお世話になっていたことをふと思い出したな。こうして私の成長も見続けてくれていたのかぁって。

新海:そう。美容師の仕事は結局ヘアのデザインしたりとかクリエイティブなものを作って喜んでもらうことが一番なんだけど、でもその人の人生を垣間見れる、それで自分も一緒に成長できる仕事なんだよね。

取材/文 タチカワ ノリコ

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