MY HERO’S INTERVIEW

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Vol.4『Like a Rolling Stone』

立河:私、ある時、杏子さんが海外ロケに行った番組を見ていたら、流暢な英語を話していて、わぉ!格好いい!!と思いました。やっぱりね、「杏子」さんには英語を話して欲しいって勝手なイメージを抱いていたので(笑)なんだか嬉しかったです。どうやって勉強したんですか?

杏子:大学は一応、英文科でした。英語を忘れないようにするために、時間を見つけては短期留学したの。1995年頃、ロンドンの英会話学校へ行って。授業中は先生に発音やイントネーションを厳しく教えられるんだけど、そのあとヨーロッパやアジアから集まってる留学生たちとカフェでお茶しながら話してると、先生に教わったことなんて忘れちゃって。各々の訛りのある英語で会話するとこれがまた、通じちゃうのよね。(笑)それじゃ、ロンドンに来た意味がないって(笑)やっぱり、日常生活の中でネイティブな人たちと一緒にいるほうが、ちゃんとした英語が身につくのかなって。 次は2000年頃、乗馬もしたいなと思って、ホームステイしながらニュージーランドに2週間ほど留学。2年後にはカナダへ。かつ、日本でもスコットランド人の先生のレッスンを受けています。第二外国語で、日々の良い事悪い事を説明しようとするのって、セラピーのような意味もあったりして。また、最近はNHKの大人の基礎英語もチェックしてます。(笑)

立河:留学も一人で行かれたんですよね?すごいなぁ。外国の文化にも触れつつ、実は古美術も好きだとか?

杏子:そうなの。京都に旅行したとき、何気なく入った国立博物館で見た絵が面白くて。現代画?なんて思っていたら、伊藤若冲没後200年っていう展覧会だったの。 江戸の人なの?って驚いて。その時、心がふるえたのが今では有名な白い象のモザイク画。京都の西陣織は升目に精密な絵を描いていくんだけど、若冲は京都の青物問屋の若旦那だったから、その繋がりでモザイクをヒントに描いたんじゃないかって説もあるの。 その他に虎の絵。若冲たち、江戸中期の画家たちは虎を見たことがなかったので、中国からの虎の絵や猫を見てイメージしながら描いたそうです。それゆえ、とんでもなくカワイイくヤンチャな虎だったり。その流れで長沢芦雪も好きになって。

立河:すごく詳しいですね。

杏子:うん、ひたすら!スキかなぁ。(笑)
自分が絵を描けないって言うのもあるし、想像力を働かせてモノを作り上げることができるって憧れるのね。

立河: 勉強熱心ですね。こうして、多岐にわたって好きなものがあって、常に新しい情報をキャッチしながらアクティブなライフスタイルを送っていらっしゃいますよね。
では、この連載のテーマである杏子さんのアイデンティティを教えてください。

杏子:うーん。これが難しいの。自分のIDは何だろう?って問われると。人生って出会う人とか、タイミング、いろんな物事によって変わってゆくけど、自分の最期を迎えるとき生涯を振り返ってみて、私はこうだったんだなぁって分かったらいいかなぁ。

立河:本当ですよね。

杏子:特に私はバービーに出会ったことで予想だにしていなかったことが人生で起き、 そのあともいろんな人に出会うことで変わり続けて行った。あえて言うとロックミュージシャンでありたいかな。(笑) その先に行くと言うか。。まだなりきれていないんだけどね。(笑)

立河:杏子さんはまだどこかで自分探しをしているところがあるのかな?

杏子:そう!探してる!ずっと、探してる!

立河:いい探し方ですね!

杏子:ライブも歌うことも大好きなんだけど、そこだけでイケルの…?って。
なんかそれはずっと思ってたことだけど。だから他にもできるっていうものが欲しいのね。
なにせ「なりきれていない」から。(笑)

立河:それは前に伺った、世代違いのロックへのコンプレックスのことですか?

杏子:ううん。それとは違うの。アンチテーゼじゃなくて単純に音楽的にやんちゃであるってこと。今も、ツアーを続けてるローリングストーンズなんて本当にスゴイ!

立河:なるほど。今はまだ模索中なんだって。それも素敵ですね。 それもある意味IDですよね。模索して、色んなことにトライするっていう姿っていうのはとても素敵なことだと思う。

杏子:ブフフフフ…。

立河:人との出会いによって人生は変わるって私も実感しています。
杏子さん、人生の分岐点で大きな出会いがあったりしたわけですけれど、出会ってなかったらどうなってたと思いますか?

杏子:普通にお嫁に行ってたかもしれない。(笑)
あとはね、レコーディングのために海外へ行った時、日本の素晴らしさを痛感したのと、いかに自分が、日本の事を知らないかが分かったの。それで、より「日本を知る事」は「自分を知ること」なのではないかと。海外に行って日本のことを教えることができるくらいになったらいいなと思って。そこから、海外で日本語の先生になりたいなって思ったりもしました。 今も五輪に向けての「外国人おもてなし語学ボランティア」っていう活動があって、是非それをやってみたくて。今年55歳になるから55(go!go!)の年ってことで、攻めの年。(笑)

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立河: 杏子さんのIDって、いろんなことをやってみることなのかな。ジョギングや、美容、絵画を見ること、海外へ行く、英語、それにご自身でもワーカーホリックだっていうけれど、好きなことでスケジュールをいっぱいにして回り続けてる。今の活き活きとした杏子さんをキープしているものは、仕事を入れる、予定を入れる、何かをしている、「動いていること」。動きながら答え合わせをしたり、また違う路を見つけたりしてるのかもしれないですよね。

杏子:常に回っていると言うか転がり続ける、そうね、like a rolling stone ね。
それで最終的に何に成りうるかって見つけられたらいいですね。それが理想かも。

Special thanks,,END


Thank you messege from Noriko Tachikawa

杏子さま

生きていると、その先が見えなくなって不安になることがあります。でも私とって杏子さんはお手本です。いつも周りに細やかな心配りをして、優しくて、繊細で謙虚な杏子さん。でも実はマドンナの自己プロデュースにも負けないくらい強い意志を持っている、そんな杏子さんを心から尊敬しています。これからも動き続けてロックミュージシャンとして、人生の先輩としてますます美しく輝き続けてください。

取材/文 タチカワ ノリコ

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「What is your identity? MY HERO’S INTERVIEW」
次回は、新しいゲストをお迎えいたします。お楽しみに!

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