MY HERO’S INTERVIEW

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Vol.4『二本の若木(わかぎ)』

立河:チャンクリ(栗山さんの呼び名)にとってのアイデンティティ。Identity、IDって色んな解釈の仕方はあるけど、一般的には自分自身の証明みたいなことじゃない? つまり今のチャンクリというものを築き上げてきたものとか、ひと言で言うと「自分ていうものは、何なんだ」と思っているかを聞いてみたい。

栗山:オレはね、両親の子だとずっと思ってる。その両親もまた二つの両親から生まれた子。オレ、おばあちゃんっ子でね。8歳の時、大好きだったおばあちゃんが死んで、とっても悲しい思いをしたわけ。今でも時々出てくるんだけど、そのおばあちゃんは国語の先生だったの。

立河:おばあちゃんが国語の先生?それで?

栗山:おばあちゃんは体が弱くて、病床記を書いていたの。その病床記にはね、ポエムだとか、すっごく綺麗な言葉が書かれていてね。今読んでも、心にすーっと沁みてくる。その中の一節に、孫であるオレと兄貴のことが書かれていたんだ。「二本の若木」ってタイトルで。

立河:わかぎ? 若い木、ね。

栗山:はい。その若木はまだ芽が出たばかりで枝も葉もつけられない。でも希望が漲っている。私はこの若木の成長を見るのが楽しみだけど、なかなかそうもいかない。 けれど、叶うことならば、この「二本の若木」がやがて枝をつけ、葉をつけ、花を咲かせるのを見てみたいと。オレ、これがね、もうずーーーーーっとトラウマのようにあるわけ。昔から悪さやったりすると、先生とか両親よりもおばぁちゃんに対して胸を痛めていたの。だからオレ、今回初めてですよ。もう老木に近いけど(笑)、その若木から一つ、ちっちゃな花が芽吹いたよ、と。

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立河:それがこの本なのね!

栗山:そう。オレね、全部先祖返しなの。両親やおばあちゃんや、顔も知らない先祖に。父親も早く死んじゃったし。

立河:そうか、居酒屋ふじのおやじさんが、自分のお父さんみたいな気持ちもどこかにあるの?

栗山:おやじと杯を交わした場面は、父親への思いからだよ。

立河:そういうことなんだ〜〜〜

栗山:そ。この本書く時、全部自分の履歴書みたいなことを洗い直して、リライトしたようなところはあった。そう思うとやはり、先祖を大事にしないとダメだよね。今でも朝と夜は西の方を向いて、朝は「今日もヨロシク」、夜は「今日もありがとうございました」ってやってるよ。

立河:ねえ、チャンクリは自分のことが好き?

栗山:好きだよ。当然好きだから、まだ知りたいよね。それはまだ何ができるだろうってことだよね。52年も自分をやってればどんな人間か大体わかってくるけど、「さて、これから君は何ができるか」って、自分の中のもう一人の自分が疑問を持つことが大切だと思うんだ。これはノリさんにも言われたんだけど、「君の中のもうひとりの君がスイッチを押したから出来た」って。

立河:なるほど。

栗山:いつも弱い自分と闘ってるのはあるし、面倒くさいこととか、やる気ねえってこととかいっぱいあるじゃん。だから好きだな、自分が。人間臭くて。一番興味深い人間だよ。

立河:自分自身が一番興味深い人間! わあ、いい言葉。

栗山:自分自身が一番解ってないからね。若いコがよく、「私って○○な人じゃないですか〜」って言うじゃない? そんなことわかんねーよ。だって100人いたら100人が見た、それぞれのオレが俺そのものなんだから。「いや、実はオレって」って言ったところで、それは理想でしかない。人から見た自分こそが自分だって40代くらいから言い聞かせてた。

立河:でもさ、自分はこう見せたいとかはあるじゃない?

栗山:努力したり試みたりもするけど、でも結局残っているのは、そうじゃなくて、自然と思われる自分なんだよ。それ以外は空想や装飾したものでしかない。だから理想なのは要らない。理想としている自分は、思いながらどこかに捨ててる。宜子が見た俺が、自分の思う自分と相違ないのが一番うれしい。

立河:そういうことだよね。

栗山:「え〜っ、あいつそんなの嘘だよ」なんて言われないのがその人らしさだと思う。オレにとっては「二本の若木」が、何でもないけど、ちゃんと生きてるなと思われるのが、先祖に対しての思いだと思う。

立河:チャンクリの話でね、若木とか、老木になっていくとか出てきたけど、木はね、年輪を重ねるごとにすごく立派になっていくわけでしょ。だから、老木じゃなくて、これからまだまだ立派になっていくわけでしょ。

栗山:きっとみんなから日射しとか水もらってるんだよ。

立河:そりゃそうよ、木は何もなくて育たないからね。私の父親は家具を作る職人で、父がテーブルとか見て言うの。「この木、立派な木だな〜」とか。私は子供の頃「何が何が?どこが立派なの?」って。そうすると父が「ほら、わかるか?1、2、3……」って年輪を数えるんですよ。

栗山:ほぅほぅ。

立河:年輪は1年で1個なんだって、樹齢っていうのは父から教えてもらったの。だから今ね、チャンクリは52歳、、、年輪が52本あるんだよね。

栗山:52年ものヴィンテージだよ。

立河:まだまだヴィンテージじゃないよ!

栗山:そうか(笑)。いや〜だけどさ、うちの母親は82歳でまだ現役で美容師やっているんだよ。

立河:うわ〜〜本当?

栗山:そう。80歳の美容師には、80歳の客がつくんだよ。それはオレ、年齢を受け入れながら生きるってことだと思うんだよ。だって右手なんて固まっちゃって動かないんだよ。もともと左の目が見えない人だったから、右の目だけで見てやってるの。今は店も縮小して客も一日一人二人でやってるけど、それでも、お客さんはうちの母親でなきゃだめなんだよ。

立河:好きなんですね、美容師が。

栗山:生きてる時の年齢って数字的なことでしかないでしょ。でもそこをパコーンと開けてみると、色々詰まっているのが人生なわけ。オレね、アップデートっていうのかな?情報は更新するんだけど、古い思い出が捨てられないの。引き出し増えちゃって、捨てられないものばっかで、どんどん脳みその中のハコが手狭になっていくんだよね(笑)。

立河:断捨離しないと。断捨離できないの(笑)?

栗山:物欲はまるでないんだけどね。

立河:そっか。なんか私も最近、いつ死ぬかわからないからなって考えるようになってきたの。だから日々ちゃんとやっていかないと、会いたい人にも会っておかないと、と思っているの。このコーナー始めたのも、それがきっかけなんだ(笑)

栗山:それは大事なことだね。会いたい人に会えるっていうのは、幸福だ。

立河:でもチャンクリは見事に自分で切り拓いてきたね。永ちゃんに会いたくて東京へ出て来て、ボスにまでなってもらって、、、いい人生だね。

栗山:予想したのとはまるで違うけど、でも上出来でしょう! 今までのプロフィールは書けるけど、先のことは書けないのが人生じゃない?

立河:わかった、じゃあ『居酒屋ふじ』の役者の件と同じように点数を聞いてみよう。あなたは今、現52歳で点数を付けるとしたら?

栗山:う〜ん、やっぱ80点はあげたいね。

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立河:そうか〜80点か、いい点数だね。人生、謳歌しているね。

栗山:いい点数だと思うんだけどね。あと20点は「まだまだ」って思う気持ちじゃないですか?格好つけるわけじゃないけど、満点なんて目指してない。今までもそうだったし、これからもきっとそう。むしろ失敗から学ぶことが重要だと思う。逃げ腰でやる気がないのは失敗でもなんでもないからね。だから80点! いつも足りない20点抱えて、これからも笑いながら身の丈で生きていくよ。

Special thanks,,END


Thank you messege from Noriko Tachikawa

栗山圭介さま

チャンクリのクリエイターとして言葉を作ること、選ぶこと、話すこと、いつもなるほど!と感動しています。新鮮、斬新なアイディアをもち、沢山の人に好かれているチャンクリは昔から絶対に人を悪く言わず、どんな時も周りを明るく変えてくれる強力空気清浄器のような人柄がきっと沢山の人に愛されるんでしょうね。どんな立場になろうとどんな人であろうと態度を変えない、そんなブレない大好きな友達。これからもよろしくね。

チャンクリ執筆の「居酒屋ふじ」にサインを頂きました。達筆!人柄がでますね。

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取材/文 野水優子

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「What is your identity? MY HERO’S INTERVIEW」
次回は、新しいゲストをお迎えいたします。お楽しみに!

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