MY HERO’S INTERVIEW

Vol.2『大切なのは“人間”と向き合うこと』

立河宜子(以下、立河):今は、部下の教育もしているんでしょ?

佐谷みゆき(以下、佐谷):今は、病棟の代表教育委員をしているの。うちはね、“3年で一人前にする”っていう教育計画がある病院なの。

立河:何を持って一人前とするの……?

佐谷:“リーダーシップがはかれる”ことを自立とみなしてるんだけど、チーム医療なので、自分のことだけじゃなく、視野を広げて、後輩たちを指導しながらリーダーシップをはかれる、と言うことを一人前としているんだ。

立河:なるほど。

佐谷:誰でも最初のころは視野が狭いし、自分のことだけで一杯一杯になっちゃうでしょ? だけど、看護師は、患者さんと患者さんの家族の中でもリーダーシップをはかっていかなきゃいけないからね。

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立河:学校で学んできたこととは違う現場での看護の仕事を覚えながら、プラスアルファ一つひとつ適応していく能力もつける、それを3年でできるようにならないといけないのね。でも、病棟の異動があると、また仕事の内容が変わったりするわけでしょ?

佐谷:看護ってね、部門によって治療の域は違っても、看護するということは同じなの。ほかの病棟に行ったら患者さんが動物になるわけじゃないからね、“対人間”なのは変わらない。治療の分野が違っても、人間であることには変わらないでしょ。私達は、病気を見ることももちろんなんだけど、人間を見ることが重要になってくる。例えば、『痛い』って言われた時に、どこからきている痛みなのか、その人は何で入院しているのか、その痛みは入院していることと繋がるのか、という感じにどう想像を膨らませるのかが大切。だからね、まずは、1年目の時に、病気を見るだけじゃなくて人間を見るんだよって言うこともしっかりと教えているの。

立河:なるほど……! 人間を見ることが重要なのね。

佐谷:看護師の仕事って基本的には、「診療の補助」と「療養上の世話」この2本柱なのね。

立河:初めて聞く言葉。

佐谷:「診療の補助」って言うのは、あくまでも医者が治療するにあたって、診察の介助をすること、手術の時に器具を出したりするのもそれだよね。

立河:お医者さんの補助っていう意味で「診療の補助」ね。

佐谷:そうそう。診療するのは医者だからね。私が働いているのは急性期病院(※1)だから、診療しに来る患者さんが前提になる。

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立河:急性期病院というのは?

佐谷:いわゆる急性の患者さんが来られる病院。重症な方もいるので、判断力も大事。だから私たちは「診療の補助」をする上で、きちんと病気や診療を知っておかないといけない。今でも勉強し続けているのは、そのためなの。

立河:勉強の内容は、病気についてということ?

佐谷:そう、病気についてもだし、その病気についてどんな治療をするのかっていうのも勉強する。管を入れたり、酸素つけたりといった治療については、絶対に知っておかないといけない。そういう基本的な学びは1、2年生の時にとことんやらせる。でも、看護師が酸素の量や薬の量を決めるわけじゃないし、そこはあくまでも補助なんだよね。だから、治療をする患者さんの「療養上の世話」が私達のメインになる。例えば、昨日まで歩いていたのに、今日、急に病気が発生して動けなくなりました。って言ったときに、患者さんは何が困る? トイレに行けない、うがいができない、顔が洗えない、人として生きる上で普通にしてきた大切なことができなくなってしまうことがあるんだよね。それを、お世話するのが私達の仕事なんだよね。

立河:QOL(※2)の向上ということ……?

佐谷:うーん、そこまで言ってしまうと大きいんだけど、今、弊害を受けているものに対して…

立河:サポートしてあげるのね。

佐谷:そうそう。人生の中で入院生活って一時しかないんだよね。その一時を病気で弊害が伴っているわけだから、そこをサポートしてあげないといけないんだって、言うことをね、後輩にはしっかり教える。

立河:それが「療養上の世話」と言うことね。思いやりと機転が利かないとできない仕事ね。

佐谷:うん、それも大切なことだよね。

(※1)急性期病院:急性疾患や慢性疾患の急性増悪などで緊急・重症な状態にある患者に対して入院・手術・検査など高度で専門的な医療を提供する病院のこと。(大辞林より)

(※2)QOL:quality of lifeの略。人々の生活を物質的な面から数量的にのみとらえるのではなく、精神的な豊かさや満足度も含めて、質的にとらえる考え方(大辞林より)

(続きます)

取材/文 SUZUKA YAKABE

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Vol.3 『coming soon』 は4月21日公開予定

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