MY HERO’S INTERVIEW

GUEST プロフィール
橋本秀昭・ひろみご夫妻
1989年ご結婚。今年27歳になる息子さんがいる。
橋本秀昭さん 1961年 埼玉県生まれ。本郷高校卒。大学浪人中、スタントマンへの道へ。その傍らホテルニューオータニ館内にあるコーヒー専門店を任され、コーヒーを極める。現在2店舗のスペインバルオーナーで先駆者。
橋本ひろみさん1961年 東京生まれ。戸板女子短期大学卒業後OLを経て結婚。

FRANKSTON 中野区中野5-56-11 電話03-3386-2018
welfun Café 渋谷区西原3-24-12 電話03-3460-3018


私の心の拠り所。スペインバルの先駆者であるセニョールこと、橋本さんと奥様のひろみさんはとても温かくて素敵な御夫婦。私のテンションを見ながら選んで出してくださるシェリーは絶品。肝臓の薬と聞いてからは尚更愛飲するようになりました。大好きなイベリコ豚の生ハムにピンチョス、魚介もこだわりのお野菜もEstá rica!シメはチャルメラかパエリア。元気をくれるこのお店はパワースポットそのものです。

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NO.2 コーヒーもお酒も飲めるbar

立河:セニョール、このお店のスタイルは変わってるよね。セニョールが淹れてくれる最高に美味しいコーヒーが飲める喫茶店風情もありながら、お酒や生ハム、パエリアなどのスペイン料理もいただける。

橋本:まず1件目を作ったのはイタリアのローマへ行ったとき。「これだ!」と思ったね。若い頃から喫茶店が大好きでありとあらゆる喫茶店巡りをして。だけど、何百軒行っても、「こんなお店がやりたいな」とモデルになる店が1軒もなかったの。なんでだろうってずっと不思議だった。喫茶店が大好きだからやりたいとは思ってはいるんだけど、俺がやりたいのは本当にコーヒーなのかな?って。それでイタリアに行った時にあったんだ。俺がやりたいことが初めてわかったの。

立河:それはなんだったの?

橋本:バール。つまり、酒もあってコーヒーもあって食べ物もある。そんなお店をやりたかったんだ。だから日本中いくら喫茶店を巡ってみても見つからないよね。

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立河:そういうことかぁ。これをバールというの?

橋本:そう。イタリアでは“バール”。スペインでは“バル”。 そのバール、昼間はコーヒーもお酒も飲める、夜は食事やつまみを楽しみながらお酒を飲んで、コーヒーも飲める、そういうスタイルで始めたんだけど25年前ってまだバールを誰も知らなかったんだよね。

立河:じゃぁバルの先駆けじゃない。

橋本:先駆けというより、早すぎるんだよね。(笑)ホテルニューオータニにいた時も社長にスタンドのカフェを開いて欲しいってお願いして作ってもらって。そのときはイタリアから200万もする4連のすごいエスプレッソマシンを仕入れてもらったの。でも日本ではまだエスプレッソを知ってる人が少なかったんだ。俺はこうやっていろんなものの導入が早すぎるんだよね。(笑)

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立河:私、エスプレッソって知ったのは実は最近。(笑)美味しいソイラテに出会ったりしてコーヒーの入れ方をちょっと勉強してるの。コーヒーについて教えて?

橋本:当時は日本にエスプレッソはまだあまり入ってきてなかったから、ほとんどがサイフォンやネルドリップの世界だったんだよね。

立河:サイフォンは昔ながらの喫茶店でよく見るね。フラスコ原理のでしょう?エスプレッソとネルドリップってどう違うの?

橋本:エスプレッソはマシンを使って強い圧力で蒸気を瞬時に通して抽出する。ドリップコーヒーは自分たちの手で落とす。そこが全然違うの。 ドリップも布を使ったネルドリップ、紙のフィルターを使ったペーパードリップっていうのがあるよね。

立河:セニョールがいつも淹れてくれる絶品のコーヒーはネルドリップだよね?

橋本:そう。ネルドリップは一番美味しくも、一番不味くも作れちゃうんだよね。要は腕次第。ペーパードリップは素人でも簡単に落とせる。

立河:私はペーパードリップだ。

橋本:ペーパーも色々と方法があるんだよ。のりちゃん、ペーパー何枚使ってる?

立河:1枚。え?まさか、何枚か重ねて使う方法もあるの?

橋本:みんな1枚だよね。実は2、3枚重ねて使うと落ちが遅くなるからじっくりと蒸らされてより深みのあるコーヒーが作れるんだよ。

立河:重ねて使うなんて想像もしたこともなかった!コーヒーって奥が深いね!

橋本:決して不快(深い)にはさせないよ。(笑)今では金属のものもあるみたいだけど、俺はネルドリップが一番美味しいと思うな。

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立河:セニョールの入れてくれたコーヒーは本当に美味しいの。さてここでセニョール直伝、素人でも美味しく入れられるコーヒー講座!コツを教えてください。

橋本:ますはじっくりと蒸らす。

立河:どうやって?

橋本:コーヒーを入れたフィルターにお湯を注ぐでしょう?入れたらコーヒーの雫が落ちるか落ないかくらいのところで注ぐのをやめて蒸らすの。豆の種類、焙煎の深さで変わってくるけど、深いものは1分半ほど。浅いものでも30秒から1分ほど蒸らすんだ。

立河:え?30秒じゃないんだ。

橋本:違うの。それは最近ポピュラーに販売されている豆は煎りが浅いので30秒ほどと言われているんだ。焼き方がもっと深いものはもっと蒸らしたほうがコク、深み、甘みが出るの。

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立河:その焙煎の深い、浅いというのは何で見分けるの?

橋本:豆の色が濃いものが深いよね。マンデリン、コロンビア、ブラジルという豆は、“苦味が美味しい豆”だから深い焙煎が美味しい。モカ、キリマンジャロなどは“酸味が上質な豆”だから焙煎を浅くするのね。いっぱい焼けば焼くほど焦げに近づくでしょう?だから苦くなる。そして焙煎を浅くすると酸味が目立つ味になるの。

立河:なるほど!豆の種類によって焙煎の方法を変えるんですね。

橋本:だから、焙煎の浅いものはあんまり長い時間蒸らさず、爽やかな酸味を味わうのがいいんだよね。

立河:セニョールは焙煎もできるの?

橋本:俺は焙煎はしない。煎ろうと思えばできなくはないけど、美味しく作るには焙煎専門の釜が大事。それはやっぱり環境の整っている焙煎家に頼むのが一番。同じようにエスプレッソ。それは機械で蒸気を通して作ると言いました。これも一般家庭用に売っているものは圧力が低い。蒸気を通すわけだからその圧力の強さが美味しいエスプレッソを入れるポイントになるからやっぱり業務用のパワーのあるものがいいよね。

立河:私、ソイラテにはまっていて、直火式のエスプレッソメーカーを買って入れてみてるんだけど、どうもコクが出ないの。

橋本:うん。どうしても蒸気を通す圧力が弱いからね。本来のエスプレッソの味を出すのは難しいかも。ただ、メッシュといって豆の細かさ、詰め具合、押し具合によって味は変わるよ。

立河:なるほど。

橋本:家庭で飲める分には十分だよね、という味はなんとか出せるんだけど、仕事としては難しいよね。

取材/文 タチカワ ノリコ
Photo Kaoru Yamamoto

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